ムーミンの作者トーベ・ヤンソンの映画が公開されていると聞いて、早速観てきました。
ムーミンといえば、平和でのほほんとしたイメージがありますよね。
そんなイメージでこの映画を観ると、ものすごく裏切られます。笑
観終わった直後の、この映画の印象は
酒!!!タバコ!!!!ダンス(意味深)!!!
(お酒のシーンは多くは無いですが、お酒が弱い私は強そうなお酒を飲むTOVEが印象的でした)
なので、
「ムーミンやミイが可愛い〜!」
「スナフキンカッコイイ〜><」
という、純粋なムーミンファンの期待に沿った映画では無いかな・・・と思います。
ただ、ムーミンという作品に大きな影響を与えることとなった、作者の壮絶な経験が掘り下げて描かれているので、トーベヤンソンってどんな人!?と気になる人にとっては、とても興味深い映画だと言えます。
私はどちらかというと、お話しやキャラクターが好きなただのムーミンファンでしたが、作者の知らない一面を知ったからこそムーミン世界の奥行きが増したように感じます。
あらすじ
第二次世界大戦後のフィンランド、ヘルシンキが舞台。
トーベ・ヤンソンの父は著名な彫刻家で、トーベ自身も芸術家としての成功を目指していたが思うような結果が出ず、父との軋轢が生じる。
トーベには当時交際していた男性アトス(既婚者)がいたが、ヴィヴィカという女性の舞台作家と出会い激しい恋に落ちた。
芸術家活動の傍らで食い繋ぐために描いていたムーミンの漫画や小説が人気となるが、ムーミンキャラクターには当時の恋人たちを投影させたりと、作品に大きな影響を与える。
漫画に小説に舞台と様々な場面で活躍を見せるトーベだが、次第に自分が本当は何をしたいのか迷いが生じるようになる。
ただ、最後には映画のポスターにも書かれている「大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかってるってことだよ」というスナフキンの言葉のように、トーベ自身で解を見つけて次のステップへと進んでいく。
印象に残った場面
踊りが印象的
物語の冒頭は、トーベの激しいダンスシーンから始まりました。
北欧らしい木造の暖かそうな部屋の中で、めちゃくちゃ踊るトーベ。
トーベがこんなにガンガン踊るような人だと知らない私は
「どうした!?何かあったのか!?」
と心配になる程でした。笑
物語の随所でこの激しく踊るトーベが登場しますが、これはトーベの怒りやどうにもならない気持ちが溢れたときの表現なのかなと思います。
トーベ本人のハツラツに踊る映像が残っていたりもするので、このようにガンガン踊って気持ちを外に出すタイプだったのかもしれないですね。
型にはまらない恋愛の形
トーベは女性ですが、男性の恋人アトスがいる時に、別の女性に猛烈な恋をします。
アトスは既婚者で、恋に落ちた女性ヴィヴィカも既婚者。
アトスの奥さんは旦那さんとトーベの関係を知っている様で、トーベの家に電話がかかってくる描写もありました。
トーベの恋愛対象が女性だと知らなかった私は、ヴィヴィカに本気で惚れるシーンでまず驚きました。
そしてどちらも結婚していることも驚いたし、奥さん公認ということにも驚きました。(後に離婚してしまうけど)
後から、この時代のフィンランドでは同性愛が違法だと知ってさらに驚き!!
トーベのヴィヴィカへの思いは強くパワーが溢れていて、映画の最後にヴィヴィカ本人が「トーベの気持ちが眩しすぎた」と語っていたというエピソードもある程。
性別も関係ない、結婚という契約も関係ない、型にはまらない恋愛の形がとても印象的でした。
自分の”得意”を受け入れる
物語の序盤、トーベは画家になり芸術家と呼ばれたいと思っていました。
でも、ムーミンの人気が出たので、初めは食べるためにムーミンを描いていました。
自分のなりたいものや、ここを見て欲しい!というところはなかなか評価されず、思いがけないところで認められるのはあるあるですよね。
トーベはムーミンの連載を承諾し、ムーミンは世界中でどんどん有名になりました。
ヴィヴィカの舞台演出でムーミンの舞台も上演され、トーベはムーミンを通じてやりたいことの幅が広がったのではないかと思います。
自分の理想の自分になれなかったとしても、もし人から認められたり誰かの役に立つ「何か」を持っているなら、そこに目を向けてシフトチェンジする勇気も時には必要なのかもしれません。
もしトーベがあくまで「画家になる事」を諦めず、ムーミンを描いてくれなかったら、私はムーミンと出会えなかった。そう考えると、ムーミンを描いてくれてありがとう!と感謝の気持ちでいっぱいです。
スナフキンはトーベの元恋人がモデル
スナフキンはムーミンの中でも特に人気の高いキャラクターですが、トーベの男性の恋人「アトス」がモデルとなっています。
スナフキンはよく旅に出てムーミン谷を去っていきますが、これはトーベのもとを離れて奥さんのもとに帰る様子が投影されているのだとか。
そして、旅から帰ってきたスナフキンは旅での出来事をムーミンに話します。
アトスが家庭でのことをトーベに話す・・・というわけではありませんが、トーベがヴィヴィカと関係を持ったと打ち明けたときには
「それは貴重な体験をしたね」
「・・・それで、どんな感じだったの?」
と、まるで旅での出来事を尋ねるようなその返答は、確かにスナフキンっぽいかな?と思いました。笑
トーベとヴィヴィカはトフスランとビフスラン
トフスランとビフスランという、変な言葉を話す仲良し二人組のキャラクターがいます。
このモデルが、トーベとヴィヴィカだそうです。
映画では二人にしか分からない言葉で気持ちを伝えあうシーンがあります。
同性愛が禁止されていた時代、周りにはわからないように二人の世界の言葉でこっそり思いを伝えていたのでしょう。
トフスランとビフスランは二人で一つのような強い絆で繋がれているキャラクターなので、トーベのヴィヴィカへの思いの強さを改めて感じました。
このエピソードを知った後で、トフスランとビフスランが出てくるムーミンのお話しを読み返したい!!と思います。
おわりに
私はムーミンのほんわりとした雰囲気と、キャラクター達が発するグッとくる言葉が好きです。
この映画を見て、いろいろな経験をしたトーベだからこそムーミンの世界を生み出せたのかなと思いました。
ほんわりした作品の作者が、ほんわりした人であるとは限らないと勉強になりました。笑
改めてムーミン読み直したいな!!!
ではまた!