半導体商社の仕事内容は?営業3年目が思う「向いてる人/向いてない人」

営業女子

半導体を取り扱う専門商社に入社してもうすぐ丸3年が経ちます。

学生の頃はそれなりに商社の仕事について理解していたつもりでしたが、実際に働いてみるとこんなはずでは・・・と思うことが多々あり、向いてないのかなと思うことも。

たった3年ですが、こんな人がうまくやってて、こんな人は苦戦してるというのが少しわかった気がするので書いていきます。

今ちょっとでも専門商社に興味がある人の参考になれば幸いです。

筆者の業務状況

つかりーん<br>
つかりーん

まず、私の業務状況について説明するよ!

事前に注意していただきたいのが、一口に営業といっても会社や部署・担当顧客の業界によって業務内容は変わります。

あくまで私の実感としてお話ししていくので、下記の状況を踏まえた上で、一つのサンプルとして読み進めてみてください。

筆者の状況
  • 文系大卒
  • 法人ルート営業
  • 担当顧客の業界=日本国内の産業機械メーカー

半導体商社の仕事内容は?

半導体商社は、半導体や電子部品を取り扱う専門の商社です。

半導体や電子部品って何?って思うかもしれませんが、機械の中にある部品をイメージしていただければと思います。つまり、文系出身にとってはよくわからん物が商材です。

このよくわからん部品を売るのが商社の仕事なのですが、まずは一般的な仕事内容を説明します。

中間マージンを貰って利益を出す

商社は自分たちでモノ作りをしません。そのため、誰かが作ったものを売ります。

例えば本屋さんのような感じですね。

近所にある●●書店では本を売っていますが、●●書店が本を発行している訳ではありません。

△△出版という別の会社が作った本を仕入れて、●●書店が売っています。

商社もこのように、仕入先が作った部品を仕入れて、その部品を使うお客様へ売っています。

なので、商社のビジネスは商売の基本「安く買って高く売る」です。

間に商社を入れることで面倒ごとが減る

でもここまで聞くと、別に商社がモノを作っている訳ではないのだから

仕入先から直接買ったほうが安いじゃん!商社って必要なの?

って思うと思います。

実際に、ただの横流しでは商社の価値は見出せません。

何かプラスαの提案をしたり、商社が在庫を持ったり、面倒な手続きを引き受けることが価値となります。

良く例えるならAmazonみたいなものです。

例えば海外でしか買えないものが欲しかった場合、自分で買おうとすると大変です。

現地に行かなければならない、通貨はドルでしか買えない、1個で良いのに1ダースからしか買えない、持って帰るのが大変・・・など。

でもAmazonだったら円で買えて、ボタン一つで持ってきてくれます。そんな便利な存在が商社です。

複数のメーカーの製品を売ることができる

商社がメーカーと違うのは、多数の会社の製品を売ることができる点です。

アサヒの社員がキリンビール売ってたら大問題ですよね。

でも商社はどのメーカーのビールも売ることができます。

だからたくさんの会社と関わることができるし、製品同士を比べて最適な製品を提案することもできます。

お客さんからしても、ビール欲しい!って言ったら複数メーカーのビールを提案してくれるから楽ですよね。自分でそれぞれのビールメーカーに買いに行く必要がありません。

しかも、国内メーカーに限らず海外のメーカーも担ぐことができます。

だから国際的な仕事をすることも多々あり、英語で電話やメールをする場面も。

扱えるメーカーが多岐にわたるので、幅広い仕事をすることができます。

納期対応や不具合対応もする

製造業のお客様は、毎日工場の製造ラインを動かして製品を造っています。

例えば毎月100台のロボットを作るとしたら、それに使われる電池100個を毎月購入します。

電池の定期購入のような感じです。

でも、たまにロボットの製造計画が急増したりもします。

そんなときに、電池を通常よりたくさん仕入れられるように仕入先と調整するのも商社の仕事です。

また、電池に不具合が起きたときに対応するのも商社営業です。

電池メーカーに不具合報告レポートを出してもらったり、仕入先と一緒にお客さんのところに行って謝ったりします。

専門商社の実態

以上が一般的な商社の仕事内容で説明される部分です。

ここからは、私が入社後に感じた実態をお伝えします。

顧客課題より自社利益

商社はいわば「儲かることならやる」というスタンスです。

マージンがすべて。利益がすべて。

自分たちの製品ではないので「この製品でお客さんの課題を解決したい」という熱い気持ちは特にありません。

もしあるとしたらそれは、商社にとって美味しい案件だから。

お客さんや仕入れ先をなんとか口説き倒して、自社の利益拡大をすることが評価されます。

特に評価されるのは、それで尚且つお客さんや仕入先にも「得をした!」と思わせられる人。

正直今まで、利益確保のために騙してるよな・・・って思うことは何度もありました。

でも、相手に「騙された!」と感じさせてはダメです。

騙されてることにすら相手に気づかせず、自分たちの利益を守る活動をすることが求められます。

まあ、営業ってそういうものなのかもしれません。

商材知識が無くても売れる

私は入社前は、この訳わからん電子部品について知らなければ営業が出来ないと思っていました。

でも実際は、そこまで商材知識は必要ありません。

もちろん知るに越したことはありませんが、基本的に何か製品の事を聞かれても商社だけで解決できることは少ないです。

だから、お客さんに対しては「今すぐメーカーに確認しますね!」と言って、メーカーには「お客さんからこう言われました!回答下さい!」とお願いする感じです。

極端な話、伝書鳩ですね。

大体、お客さんはモノ作りのプロです。現役のエンジニアだったりするので、文系卒の私が対等に話をするなんて百年早いのです。

困ったら仕入先とお客さんに直接話し合わせれば良いのです。

また、私の会社は営業の他に特定の商材に詳しい専門部隊「販売促進部」があります。(略して販促)

なので、営業だけでは話が専門的過ぎてわからない!となれば、販促を呼んで代わりに会話してもらいます。

こうなると営業は、詳しい細部まで状況を理解していなくても大丈夫です。

営業必要なのか!?っ思いませんか?私は自分の存在意義がわからなくなりました。

でも、営業の価値は商材知識ではありません。そんなのはメーカーに勝ることはあり得ませんから。

商社営業の価値は、お客さんと仲良くすること・人脈構築できることです。

何度も足を運んで顔を覚えてもらって、会ってもらえる話してもらえる関係を築くことが商社営業に求められることだと思います。

これをやりがいに感じる人には向いてると思いますが、「自分の言葉で提案したい」「お客さんの課題に寄り添いたい」という気持ちが強い人には自分が無力に思えて辛いかもしれません。

私は自分で説明したい、自分で提案したい気持ちが強かったので、私が理解していなくてもメーカーとお客さんが納得して進んでる状況がもどかしく感じます。

モノづくりに携わっている実感は薄い

入社前は「最先端の技術が詰まった日本の大企業の製造に関われるのか!」と思っていました。

お客さんのやりたい事が具体的にわかって、私もそのプロジェクトの一員になった感じで提案活動ができるのかと想像していました。

でも現実は、そこまで内側には入れません。笑

それは、お客さんの新製品情報はリリースするまで詳しく開示してもらえない事が大きいかなと思います。

具体的に採用が決まればお客さんが教えてくれる情報も増えますが、最初の提案〜売込み段階で新製品の情報を教えてくれる事は少ないです。(機密情報ですもんね・・・)

なので、新製品の話を秘密にされている感じがするときは、少し寂しかったりします。

また、文系出身の営業には機械がどうやって動くのかと言う機械工学のような知識がありません。

そのため、先述した通りお客さんが課題としている内容が難しすぎて理解できない事が多いです。

どうしてこの部品が必要なのか、実験結果が良くないらしいけど改善方法は無いのか、といった事はお客さんと一緒に考えられません。(難しすぎて)

なので、そこを理解したいと思うとかなりの茨の道となります。

営業マン=緩衝材

商社営業は、お客さんと仕入先の2方面から責められることがあります。

お客さんからは「あのメーカーはあり得ない!なんとかしろ!」

メーカーからは「あのお客は我儘すぎる!なんとかしろ!」

そして、味方だと思っていた社内にも敵有りです。

上司のメンツを保つためにお客さんや仕入先を調整しなければならないこともあります。

客・メーカー・社内の三方よしの状態を作ることも仕事の一つです。

普通にしていたら交わらないそれぞれの思いを汲み取り、妥協点を探り、着地点を見つけていくこと。

つまり営業マンが緩衝材になって場を収めることに徹する場面も多々あります。

商社営業に向いてる人

以上のことから、私が思う向いてる人はこんなタイプです。私の思いが詰まってるので、必ずしもこうとは言い切れませんし、部署によっても違うと思いますが。。。

自分を売り込みたい人

商社は商材を売っているのではありません。自分を売っているのです。

営業一般的に言われることかもしれませんが、商社の場合は特にそう思います。

だって、別に特定の商社から買う理由はありません。しかも正直、商社同士の差なんて大してありません。

商社の差=営業マンの差だと私は思います。

だから、お客さんの懐に入れる人、足繁く通って人間関係を築いていく事にやりがいを感じる人には向いてると思います。

自社の利益を重視できる人

あくまで自社利益に拘れる人は向いていると思います。(どんな分野でも営業とはそうなのかもしれませんが)

どんなにお客さんの悩みが深かったり、解決してあげたいと思っても、自社利益にならないならバッサリ切る姿勢も必要です。

いろんなものを売りたい人

本当に多種多様なメーカーを担ぐことができるので、いろんなものを売りたい人には向いていると思います。

「狭く深く」よりも「広く浅く」を好む人には適しているのではないでしょうか。

うまく立ち回る事が上手い人・受け流せる人

物事をうまく進めるために、いろんな人たちの間に入らなければなりません。

そこでうまく立ち回り、周りをうまく動かし、面倒なことになっても受け流せる人は強いと思います。

世渡り上手というやつでしょうか。

ただ、このようなスキルは商社営業に関わらずとも持っていたらどこでも生きていける気がするので、ビジネススキルを身に付ける上では良い経験になるかもしれません。

残業できる人

商社はいわば伝書鳩なのですから、鳩が早々に帰ってしまってはお客さんも仕入先も迷惑します。

働き方改革とか色々言われてますが、正直な話メーカーからの回答やお客さんからの依頼をタイムラグなく正しく展開できる営業マンが求められます。

日中は外回りや打ち合わせでなかなか対応できない依頼があるので、残業してこなしていける人が実際のところ求められる営業マンであると感じます。

向いていないかもしれない人

別にこれに当てはまるからといって向いていないわけでは無いと思います。

それに、このような側面を持つことは時に武器ともなり得ます。

ですが、これらの面が強すぎると、営業していく上で辛くなってしまうかな・・・と思う特徴をあげました。(実際に私は辛く感じました)

共感力がありすぎる

お客さんの課題を聞いた時に「何とかしてあげたい!」と思いすぎる人は自分を無力に感じるかもしれません。

何とかする事が自社の利益になるなら周りも協力してくれます。

でも、お客さんからの「ありがとう」の為だけにお金にならない事を頑張るのであれば、周りの人の協力は得られません。

自分一人でやっとの思いで何とかしてあげたとしても、それに対する工数を考えると社内では評価されません。

「今貸しを作る事で、後々大きな案件をもらえるんだ」という強かな気持ちの上なら理解されるかもしれませんが、「何とかしてあげたい」という気持ちだけではどうにもなりません。(まあボランディアではないですから)

モノづくりに関わりたい人

先ほど述べたように、モノづくりに深く関わる実感を得ることは難しいです。

ずっと続けていると、数年に一度そういう商談はあるかもしれません。

でも本当にモノづくりについて知りたいなら、実際にモノを作ってるメーカーに就職した方が理想に近づくと思います。

もしくは、まずはエンジニアになって知識を深めるのも選択の一つです。

実際、メーカーのエンジニア→半導体商社へ転職した人がいますが、商社では無双してます。

なかなか周りに設計の気持ちがわかる営業マンがいないので、唯一無二の存在になれます。

設計者の立場に寄り添って考えられる人になるためには、一度設計者を経験するのが一番だと私は思います。

専門知識を身に付けたい人

専門商社だから専門家になれる!ということは全くありません。

販促でさえ、専門家にはなれません。あくまで他の営業よりはそのメーカーの製品に詳しいというだけです。

いざとなればメーカー頼りなのは変わりません。

電気回路をよく理解したい!ブロック図を読んだり書いたりできるようになりたい!という人は絶対に営業向きではありません。

確かに電気回路やブロック図が読める営業は強いです。

でも、工学部出身者ならともかく、文系卒で営業になる場合は独学でその知識を得るのはかなり難しいです。

業務時間中にそのようなことを取得しようとしても、見積書作成や会議の日程調整や電話対応や売上予算の管理などの他業務が膨大にあります。

業務時間外に大学で学ぶ工学を自ら勉強する意識がなければ「専門家」になることは難しいです。

そのような苦労をするなら始めからエンジニアを目指した方が良いと思います。

残業したくない人

営業マンにとって、仕事の半分は自ら掴みに行く仕事であり、もう半分は降ってくる仕事です。

そしてその半分の降ってくる仕事の量は事前にわかりません。

どんなに計画的に物事を進めても、いきなり思ってもいない厄介ごとが舞い込むこともあります。

商社が案件を寝かせてはいけないので、すぐに対応するためにも残業を強いられることがあります。

自分でコントロールすることが難しいため、残業したくない人には辛いかもしれません。

冒頭でも言いましたが、私は結局この慢性的な残業が嫌だったので退職を決断しました。

終わりに

以上が私の感じた実態です。

もちろん、部署や業界によって感じ方は様々です。

私は自分自身人と話すことが好きなので営業に向いていると思っていましたが、商材が難しく馴染めない&お客さんの立場に立って考えられないという点でとても辛く感じます。

ただ、営業を通して学べたこともたくさんあると思っています。

私の体験が少しでも、みなさんが営業する姿を具体的にイメージする参考となれば幸いです。

ではまた!

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